物語に描かれる病気6「解夏」

解夏

解夏

解夏
さだまさし/著
幻冬舎
Fサ

 東京下町で小学校の教師を勤めていた高野隆之は眼の難病ベーチェット病(注1)を患い、傷心一人故郷長崎へ帰ります。
 やり場のない業を背負い苦悩する隆之と、彼を追ってそっと寄り添う婚約者の陽子。その二人の前に突如現れた謎の老人は、仏教の説法を優しく語りかけます。
 果たして二人は先の見えない暗闇から抜け出し、将来に光明を見出すことができるのでしょうか?
 異国情緒漂う長崎を舞台に、失明の恐怖と闘う主人公の葛藤を美しくも切なく描く筆致は“言葉の魔術師”とも言われた著者ならではです。
「解夏」という言葉の意味も噛みしめて読んでもらいたい作品です。


(注1)<ベーチェット病>
全身を襲う慢性再発性の炎症疾患で失明に至ることもある。
未だに原因不明で、有効な治療も確立していない難病である。